辞書の話⑥~「英語引用句辞典」で分かった意外な事

読書

 最近、HBO最新ドラマ「ダーク・マテリアルズ」に触れていたら、世界観やクリエイティブの根底に流れるものが、「ハリー・ポッター」ほど軽くはないが「ロード・オブ・ザ・リング」ほど重たくもない、足して2で割った感じがしていました。そして、この「ダーク・マテリアルズ」からもきっと数々の名台詞が生まれるのかなーと思って、そういえば「ハリー・ポッター」にも名言があったなと思い出しました。私が覚えている中では”The truth will out”というのがあります。これは、マグル(魔法使いでなく普通の人)が良く使っていたセリフですが、「真実は隠せぬ」とか「真実はいづれ明らかになる」と訳されていました。 「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」では、ウィーズリーの父親が”As the Muggles say, truth will out.”(マグルいわく、”真実は隠せぬ”ってな)というように使っていましたね。

 この”The truth will out”という表現は、もともとシェイクスピアの喜劇「ベニスの商人」で使われていたセリフですが、今では日常的に使われるようになっている慣用句です。簡単な単語で、端的に、言い方によっては力強くも、諭す意味合いも出てくるフレーズです。

 シェイクスピア自体を深く論ずるつもりは毛頭ないのでそれはよく知っている方にお任せしますが、シェイクスピアの作品をモチーフに作られた映画はたくさんありますし、シェイクスピアの作品から生まれた慣用句もたくさんあるんだなと感じて調べてみたわけです。そこで今回登場する辞典がこちら。

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 ロングマン「英語引用句辞典」(北星堂)

 この辞書もまた、「調べる」というより「読む」のに適した辞書で、「調べた」つもりが延々と「読んで」時間が経ってしまった、という結末になります。しかし今回は、シェイクスピアの引用句を、あえて「調べて」みようと辞書を開くと、そこには40の引用句が掲載されていました。「ハムレット」や「マクベス」などのセリフが多くを占めていますが、そのなかで1960年頃の戯曲「シンベリン」第3幕第4場に登場するセリフをご紹介しましょう。

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この翻訳はこうです。

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 嫉妬深い夫のポスチュマスは、妻イモージェンが不貞を働いていると信じ、家来に殺害を命令。家来から命令を聞いた妻イモージェンは、その後悩み続けて「一睡もしておりません」と付け加えるシーンでのセリフです。なるほど、女性が語るのを想像すると、力強さや頑なさが伝わってくるようです。でもここで、“wink”という単語に引っ掛かりました。シェイクスピアの時代、つまりエリザベス時代の英語の”wink”は、ウィンクの「片目を瞑る」ではなく「両方の目を閉じる」という意味で使われていたのですね。

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 今度は”wink”をPOD(POCKET OXFORD DICTIONARY)第7版で調べてみたところ、

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 そうです、明確に”eye or eyes”と書いてありました。さらに名詞では、「うたた寝」的な意味を持たせているんですね。よく「ウィンクしてごらん」といって片目だけを瞑ることができなくて、両目を閉じてしまう人もいますが、英語語源的には両目で瞑っても問題ないのではないか、といくことがわかりました。

 またまた、辞書から辞書へ渡り歩いてしまいましたが、毎回、言葉の奥深さに感嘆してしまいます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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