辞書の話⑤~逆引き辞典はなかなか面白い!

読書

「辞書は引くものでもあり、読むものでもある」と語る人は、案外多いことがわかりました。『そして、僕はOEDを読んだ』のアモン・シェイさん、『フィネガンズ・ウェイク』や『ユリシーズ』などの独特な翻訳を手掛けた柳瀬尚紀さん、三省堂で長きにわたって辞書作りをした鵜澤伸雄さん、皆さん自分の著作の冒頭で「辞書を読む」楽しみを書き記しています。柳瀬さんは『辞書はジョイスフル』『辞書を読む愉楽』と、タイトルがそのものが「辞書を読み楽しむ」本を記しています。

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 『辞書はジョイスフル』は、様々な辞書へのアプローチの仕方、楽しみ方や言葉の発見があり、何度も読み返してしまいます。その中から興味深く、かつ珍しい辞書のお話をご紹介しましょう。「寝ても醒めても語尾砂漠ー逆引き辞典」という一節です。

日本語尾音索引ー現代語篇ー(笠間書院)というのが出たとき、面白そうなので、すぐに買った。岩波国語辞典第二版を逆引きにしたものである。昭和五十三年(一九七八年)九月三十日初版発行。定価七千円。これに飛びついたのは、ときどきエッセイなどで語尾をそろえる遊びをしていたし、翻訳でもそういう遊びが必要になることがあるからだ。

 柳瀬さんはエドワード・リアのリメリック集、『ナンセンスの絵本』を翻訳した際に、この逆引き語彙集をとことん使い、とても常人ではまねのできないような面白い、かつ見事な翻訳をしています。英語の原文では、

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 この五行のナンセンス詩は、それぞれのセンテンスのオシリの音が韻を踏んでいて「アード、アード、ンド、ンド、アード」といったようにa-a-b-b-aの脚韻がふまれています。それを柳瀬さんは見事に翻訳しました!

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 語尾の一音を合わせるだけでなく、二音合わせてくるあたりが、柳瀬さんのすごいところです。興味があるかたは、是非、柳瀬さんが翻訳した「ナンセンスの絵本」を開いてみてください。

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 いったい誰が何の目的で使うのか、すぐには想像できなかった「逆引き辞典」。しかし、とても有益に、かつクリエイティブに使われているのがわかり、俄然手に入れたくなってしまいました。そして、またまた古本屋を巡っていたら、ありました、ありました『逆引き広辞苑』

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 『広辞苑第四版』を元に作られた『逆引き広辞苑』。私の手元には最新版の『広辞苑第七版』と『広辞苑第五版』の二冊があったので、第五版なら『逆引き広辞苑』と比較的整合性がとれるなー!と思い即購入しました。背表紙側を見ると、これまた、帯の文言に惹かれてしまいました。クロスワード用!確かにですねー。

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 柳瀬さんも、『辞書はジョイスフル』のなかで「逆引き広辞苑」の面白さに言及しています。

しかし、二十万を越える広辞苑の収録項目が逆順に並ぶのをながめると、よくもまあ、こんなに日本語の語彙はあるものだと、そのことに改めて驚く。そして項目のみの配列なので、自分のボキャブラリーの乏しさを知るには類のない問題集になっている。

 『辞書はジョイスフル』の中でも引用されているところを、ここでも少し引用してみましょう。この辞書の最後の語である「わんわん」からさかのぼってみます。

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 「ホールインワン」や地名の湾、「塗椀」あたりはわかりますが、「御平椀」ってどんなお椀?「沈腕」ってどんな意味?「ラワン」はあのラワン材の「ラワン」?!などと考えていると、あっという間に時が過ぎてしまいます。ちなみに「広辞苑第五版」で「ちんわん【枕腕】」を調べてみたら、「執筆法の一。左手を平らに机上に伏せ、筆を執る右手をその上にのせて文字を書くこと。多く細字を書くときに用いる。」とありました(㊦参照)。

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辞書から辞書へと広がる世界。いやいや、楽しいものです。

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