テレビの世界の話②「大部屋主義よ、もう一度」

放送・メディア

人の体における「滞り」とは何か?

「気・血・水(津液)」この3つが体内を循環することによって、私たちの健康は保たれています。どれかが不足したり流れが滞ったりすると、身体の不調が起こるというものです。これは東洋医学で語られる人の構成と病気に対する考え方で、西洋医学的解剖学における人体の構造や病気の成り立ちとは異なるものの考え方に立脚しています。東洋医学は何千年という歴史を持ち、わが国でも長い間恩恵を受けてきました(もちろん今でも受けています)。一方、西洋医学はというと、16世紀に輸入され、わずか400年程度の積み重ねしかないものなのです。
日本人にとって東洋医学は長いパートナーであったのですが、細菌学を駆使して感染症を劇的に克服した西洋医学的療法を目の当たりにすると病気に対する考え方は変わらざるをえません。しかし、それはあくまで対症療法的なものであり、「病(やまい)」そのものに目をむけ、病の根本を変えてゆく東洋医学のチカラが近年見直されているのもうなずけます。

放送の現場でも「滞り」が発生?!

昨今、放送の現場あるいはジャーナリズムの現場では「滞り」が多発しているのではないでしょうか。「視聴者の姿が見えない」「番組は面白いが見られていない」「お客さんはどこにいるのか、が判らない」。放送局は組織的には整理された集団が機能しているように見えます。しかし、東洋医学的にみると分断された事業の固まり(編成局、制作局や営業局など)は、機能的であればあるほど機能を失っているような気がしてならないのです。

対話から生まれる「場」の再生

では、「気・血・水」の視点で放送の現場をみてみましょう。

「気」はエネルギー源として、それはまさしく放送に携わる人間たち。「血」は各臓器に栄養を与える血液の役割であり、「営業&制作」といった実行部隊になぞらえることができるのです。そして「水(津液」は全身を潤す体液で、つまりは「編成」に他ならないのです。これらが滞っているのだから、放送に元気がないのもあたりまえ。「コンテンツ」と「コンジット」の相乗が放送の醍醐味であり、コンテンツ消費社会、コンテンツ至上主義に陥らないために放送文化が重要であり必要なのです。伝えたいものがあってこそのメディアではないのでしょうか。放送には、実は「気」が巡っているのです。

「フジテレビはなぜ凋落したのか」

放送人ならばつい手を伸ばしそうなタイトル「フジテレビはなぜ凋落したのか」。評論的目線でなく実際にフジテレビに在席された経験を元に、テレビ界の悩みが語られています。特に、かつてフジテレビが1970年代の暗闇の時代から躍り出した1984年の大規模な人事異動と同じくして進められた「大部屋主義」のくだりは面白い。

画像1

「編成」「制作」「報道」「スポーツ」「営業」の各セクションを、新宿区河田町にある旧社屋三階の同じフロアに置くとともに、テレビ局の中心部「編成」と現場の「制作」を「大部屋」にまとめて収容したのだ。これで社員同士が顔を突き合わせて話ができる環境が誕生した。(中略)自ずと仲間意識は強くなり、社員ひとりひとりが、自分はフジテレビと言う「共同体」の一員であるという意識をもつことになった。


その後、フジテレビは誰もが知るように「おれたちひょうきん族」といったバラエティ黄金時代を築き、報道までもショー化した「スーパーニュース」の鮮烈な登場、「夢工場」といった一大コンテンツイベントなど、その力を見せ付けた時代が続いていきます。しかし、筆者はその「大部屋主義」という思想が現在のフジテレビにはなくなったと記しているのです。そこには物理的にお台場の社屋の構造が影響しているとも記されています。

社内のコミュニケーションはいつもうまくいくとは限らない。ちょっとした警戒感から人と人の間に生じた“壁”を乗り越えるため、顔を見て本音で話し合える”場“を日本企業は意識的に作ってきた。(中略)今テレビ業界で”場“の力を最大限に活用し、会社全体の勢いに結びつけているのは日本テレビであろう。

「大部屋主義」すなわち“場”を作り上げることで、モノ作りを下支えし、ボトムアップのイノベーションを推進する事が必要なのであろう、というように著者は放送局にとどまらない企業論へと展開しています。


東洋医学的にも「場」は極めて重要視されます。「この場に気が流れているか」「この生命場にはエネルギーが宿っているか。目には見えない、しかし人と人が対話することで生まれる「場」の再生、「場」の力こそが、我々の放送界が次のレイヤーに進めるキーなのではないかなと感じたのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

フジテレビはなぜ凋落したのか (新潮新書) [ 吉野嘉高 ]

価格:814円
(2020/3/15 09:04時点)
感想(0件)

コメント

タイトルとURLをコピーしました